5.資金調達(2)〜後編〜

資金調達

今回はなんと、資金繰り表のエクセルシートが無料でダウンロードできます!

先週やったことを覚えているでしょうか。
忘れてしまった方は、もう一度前回の内容を復習してください。

出資見込者への対応

事業へ出資しようという人は どのような形でお金を出したいのか、自分なりのアイデアを持っているものです。
開業しようと思っているあなたは、おそらく経験に乏しく、お金もほとんど持っていないでしょうから、きっと交渉できる立場になくて、相手から提示された条件をあるがままに受け入れなければならない、と考えているかもしれません。
なるほど、たしかに強い交渉力をあなたは持っていないかもしれません。ですが、相手の提案条件を注意深く吟味して、必要なら交渉してみるべきです。(交渉のスキルについても、今後の記事で詳しく述べる予定です。)

覚えておきましょう。出資者があなたの事業にお金を出すということは、「あなた」という人間に投資しようとしているのです。
つまるところ、事業を成功に導く主な要因は、あなたのスキルであり、あなたのたゆまぬ熱意であり、あなたのモチベーションの高さなのであって、彼のカネではないのです。
にもかかわらず、その出資見込者は、あまりに一方的な内容の契約条件を提示してくることもあるでしょう。
そのような場合は、親類の誰かや知人が助言者となって、あなたの交渉をバックアップしてくれたり、ビジネス的な面でのアドバイスをくれたりするかもしれません。
あるいは、あなたの事業が軌道に乗ったら顧問契約をするなどの約束で、会計士などの専門家が無料(または格安料金)であなたの相談に乗ってくれるかもしれません。

開業資金調達の種類

ところで、開業時の資金調達には大きく分けて2種類の形式があります。「融資」と「出資」だ。

【融資を受ける】
「融資」とは、お金を借りることです。借金だから、返さなければなりません。
様々な種類の融資(ローン)があります。

  • 長期ローン
    設備投資や運転資金のために、1年以上の期間にわたって借り入れるもの。
    銀行や信用金庫などの金融機関から借りるのが一般的です。
    借り入れに当たっては、何らかの保証を求められるでしょう。
    あなたの個人保証、親類の連帯保証、不動産などの資産を担保にするなどです。
  • 短期ローン
    主として1年以内に返済するローンで、一時的な運転資金や小規模な設備投資などの目的で借り入れるもの。
    借入先としては銀行や信用金庫のほか、リース会社、信販会社、商工ローン系などがあります。
    無担保・無保証人で借りられるものもありますが、たいていは何らかの保証を求められます。
    なお銀行によっては、預金口座に一定限度額の口座借越を設定してくれることもあります。
    口座借越とは、預金口座からの支払引落金額が一時的に預金残高を超えてしまっても大丈夫なように設定しておくもので、預金残高が一時的にマイナスとなります。
    その分は借り入れたのと同じことですから、これも短期ローンの一種といえるでしょう。
  • カードローン
    個人や会社経営者にカードを発行し、一定限度額の範囲内であれば何度でも借り入れできるもの。
    カード発行者は銀行や信用金庫など金融機関のほか、クレジットカード会社、リース会社、信販会社、百貨店・スーパー等流通系から消費者金融系まで多岐にわたります。
    たいてい無担保・無保証人でカードが発行され、いったんカードを手にすれば、必要なときにATM等でお金を借りることができます。
    分割払いやリボルビング払いなどができるものもあります。ただし金利は一般の銀行貸出利率に比べると相当高く、実際の借入日数に応じて計算されます。
  • 低利融資制度
    一般的な市中のローンよりも金利や貸付条件の面で有利な公的融資制度。
    日本政策金融公庫(旧称:国民生活金融公庫)などの政府系金融機関が提供しています。
    特に金利が1~2%台と、市中のローンに比べて圧倒的に低いのが特徴で、中には無担保・無保証人で貸してくれるものもあります。
    創業者向けの公的融資制度もいくつかあるので、下記にいくつか例をあげておきましょう。「新規開業資金 」
    http://www.jfc.go.jp/k/yuushi/atarasiku/01_sinkikaigyou_m.html
    (対象)現在勤めている企業と同業種の事業を始める人で、一定の条件に該当する人ほか
    (担保・保証人)原則として必要「女性、若者/シニア起業家資金」
    http://www.jfc.go.jp/k/yuushi/atarasiku/02_zyoseikigyouka_m.html
    (対象)女性または30歳未満か55歳以上の人であって、 新たに開業する人や開業しておおむね5年以内の人
    (担保・保証人)原則として必要

    「新創業融資制度」
    http://www.jfc.go.jp/k/yuushi/atarasiku/04_shinsogyo_m.html
    (対象)新しく事業を始める人
    (担保・保証人)事業計画(ビジネスプラン)を審査のうえ無担保・無保証人で融資。ただし貸付金額と同額以上の自己資金があることが条件。

    最寄の商工会議所等に行けば、こうした公的融資制度の資料がたくさん置いてありますし、相談にものってくれるでしょう。

【出資を受ける】
「出資」とは、会社設立の際に資本金を出してもらうことです。
具体的には会社が株式を発行し、それを購入してもらう形となります。
こうして得たお金は「資本金」と呼ばれ、借金ではありません。出資者が自分のリスクでお金を出すものなので、返済の必要は無いのです。
そのかわり出資者は、配当金などの形での見返りを期待するし、資本金の持分に応じて事業の経営や決定にも口を出す権利があります。
「融資」は借金ですから、借りたお金と金利さえ返済していればそれで済むのですが、「出資」の場合はこのように、出資者があなたの経営方針に直接関与してくるということを覚えておきましょう。

融資や出資を受ける際に覚えておきたいポイント

事業資金の調達に当たっては、融資にせよ出資にせよ、あなたの事業にお金を出す方を保護するために定められた様々な規約がある。
これらの諸規約が定める条件は非常に多岐にわたり複雑なのですが、以下のポイントについては留意しておきたいです。

  • 規約の中には交渉不可能なものがあります。あるいは、非常に限られた範囲でしか交渉余地のないものがあります。
    一例をあげると、カードローンには標準的な規約が定められており、それと異なる条件になることはまずありません。
  • 規約の中には大変複雑なものもあります。契約書類に含まれる用語が意味するところは、一読すると大変難解に思われるかもしれません。
    しかし、自分が署名する書面なのですから、内容を理解するための時間と手間を惜しむべきではありません。
  • 相手から提示された条件で、あなたから見て「あまりに手の込んだ条項だ」と思われるような部分は少し疑ってかかるべし。
    実際、そういったものは何か言外の意味を含んでいる可能性があるのです。出資者(おそらくは彼のアドバイザー)が、自分自身で意味を理解できない文言を起草することはないでしょう。
  • とはいえ、リスクを負って自らのお金を出す者が一定の保証や安心感を求めるのは当然であるということを、あなたも受け容れる必要があるでしょう。
    彼らには、経営者(あなたのことです)による軽率な事業運営(たとえば性急な事業拡大、過剰取引、本業と関連の薄い分野や経験の乏しい分野への多角化、過大借入、重要な資産の売却など)から保護される資格があるのです。
  • 会社組織で事業を行なう場合であっても、会社の借入や負債に対して、あなたの個人保証を求められることが多いものと思っておいたほうがよいです。あなたの資産を担保にするとか、そうでなければ両親や親類の連帯保証が求められる場合もあるでしょう。

経理処理

資金提供者に対して誠実であり続けるためにも、そしてあなたの事業の生き残りと拡大を図るためにも、経理は重要です。
以下の点を遵守しましょう。

  • 取引やお金の動きを正確に記録し、つねに最新に保つこと。
  • 納税や確定申告は所定の期限までに行なおう。つねに法令には従うよう最善を尽くすこと。
  • 資金繰り表サンプル

    事業の資金繰り(キャッシュフロー)をしっかり管理すること。
    順調に受注しているように見えても、売上はあるのに代金が未回収の場合など、入金と出金とのタイミングが合わなくなると資金繰りが苦しくなります。
    事業を経営していく上で「資金繰り表(画像参照)(エクセルバージョン)」は不可欠です。資金繰り表を作れば、月々いくらの現金が入ってくる予定で、いくらの支出がある見込みなのか、よくわかるはずです。
    あなたのビジネスプランが完全とはいえなくとも、「資金繰り表」だけは準備しておく必要があります。少なくとも初年度分の「資金繰り表」を作っておかなければなりません。そして、それを毎月アップデートしていくことです。
    あまりに多くの開業者が事業に失敗していますが、その最たる理由は、顧客から入金があるまでの間に出ていく支出(仕入代金や様々な経費)を賄えるだけの、十分な現金を確保していなかったからです。
    それと、自分の仕事にかかる経費を正確に把握しておらず、お金の流れをドンブリ勘定にしていたからです。

  • 顧客への請求書は速やかに出しましょう。請求を決して遅らせてはなりません。商品・サービスを提供した時点で(もし可能ならそれより前でも)請求書を発行すべし。
  • 新規顧客と取引するときは、なるべく仮発注書をもらうようにしましょう。もし可能なら、代金の一部を前払金で受け取るようにしましょう。
  • 顧客の支払いを早める効果があるならば、少し値引きをして請求書を出すのもよいでしょう。ともかく「現金が入る」ということは、あなたのキャッシュフローを健全にするのですから。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!次回は、仕事場についてのお話です。
記事に誤りなどがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。また、ご意見・ご感想などもお気軽にお寄せください。
「こんな内容の記事を書いて欲しい」「こんなことで悩んでいる」などのご要望やご相談もお気軽に!

この記事の著者

藤田 健プランニングディレクター

Skillotsを含むエフ・プラット株式会社の全てのサービスの企画・運営責任者。
神奈川県出身・中野区在住。

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