9.自らのデザイン・イラストを守る(2)

copyright

今日は3回に分けてお話ししている知的財産権をテーマにした記事の第2回目です。
前回お話ししたように、デザイン知財を守る法律にはいくつかあります。忘れてしまった方は、こちらの表を見てもういちど確認してください。
先週は、著作物を保護する「著作権」と、工業デザインを保護する「意匠権」について説明しました。
今回は、商品やサービスの名前・マーク・シンボルを保護する「商標権」、発明を保護する「特許権」、考案を保護する「実用新案権」について説明します。

特に、商品デザインに関わるインダストリアルデザイナーや、ロゴデザイン、パッケージデザインなどに関わるグラフィックデザイナーの皆さんにとって有益な内容になっています。

■商標権

◆商標とは

私たち生活者は実際に商品を見たりサービスを受けたりする前から、商品名やブランド名で一定の価値判断をしているものです。たとえば電化製品なら「この会社の商品は丈夫で長持ち」、宅配便なら「あの会社が便利で親切」といった印象をすでに持っていることも多いでしょう。
このような商品・サービスの名前のことを「商標」といいます。商品や看板などについているマークやシンボルも「商標」です。

商標は、消費者にとっては、その商品・サービスがどこの企業のもので、信頼できるものなのかどうかを判断する手がかりとなるものです。また企業にとっては、これまで積み重ねてきた実績や企業努力の表れだといえるでしょう。商標が ”商品の身分証明書” とも呼ばれるゆえんです。

商標法では、商品およびサービスの商標を保護しています。
商標法において、「商標」は以下のように定義されています。

この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

商標法 平成二七年七月一〇日法律第五五号

商標の種類●新しい商標

2015年以前はいわゆる「ロゴ」や「キャラクター」などの文字や図形、記号、立体のみが商標として認められていましたが、2015年からは「色彩(の組み合わせ)」「音(サウンドロゴ)」「動き(ロゴアニメーション)」「ホログラム」「位置」も商標として登録できるようになりました。欧米では、味や臭いも商標として登録できます。

Skillotsのロゴアニメーション

 

◆商標登録の条件

商標は特許庁が審査のうえ登録します。商標法では、商標登録出願される商標について登録できるものと、登録できないもののルールを定めています。自らの業務で提供している商品・サービスに付ける商標であって、他者の商品・サービスと識別できる商標であることがまず条件となります。
ただし、次のような商標は登録を受けることができません。

①商品・サービスの一般的な名称を普通に表示するだけの商標

・・・たとえば時計に「時計」という商標をつけても商標登録できません。(この場合、「○○時計」のように○○部分に固有名詞が入っていれば登録しうる。)

②商品・サービスについてすでに同業者間で慣用されている商標

・・・たとえば「観光ホテル」という商標は業界間ですでに一般的に使われているので商標登録できません。(この場合、「○○観光ホテル」のように○○部分に固有名詞が入っていれば登録しうる。)

③商品の産地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、生産方法等を普通に表示するだけの商標

・・・たとえばブラウスに商品の原材料を示す「シルク」という商標をつけても商標登録できません。銭湯に効能を示す「疲労回復」という商標をつけても商標登録できません。

④ありふれた氏または名称を普通に表示するだけの商標

・・・たとえば饅頭に「佐藤」や「鈴木」とだけ商標をつけても商標登録できません。

⑤その他、公序良俗に反するおそれがある商標や、日本や外国の国旗・紋章、国際連合など主要国際機関の標章、白地赤十字または赤十字と同一または類似の商標などは登録できません。

◆商標の保護

商標登録をしていれば、他の事業者が同一または類似の名称を、同種の商品・サービスに対して使うことを防ぐことができます。
商標登録をしていれば、その名称が信用と評判を有していることを、いちいち証明する必要もなくなります。
したがって、もしも第三者が同種の商品・サービスに対して同様な名称を使用していた場合にも、訴訟・紛争の解決を有利に進めやすいということです。

さらに、もし登録商標を持っていれば、他の事業者にその使用を有料でライセンスすることもできます。
このように商標は、他の知的財産権と同様に資産となるのです。

商標が登録されると、その商標は設定登録の日から10年間保護されます。
一定の条件と手続により、さらに10年間ずつ何回でも更新することができるのです。

◆商標出願の手数料および登録料

・商標登録出願・・・3,400円+(区分数×8,600円)
・登録料・・・37,600円×区分数
・更新登録申請・・・48,500円×区分数

※区分数とは、ある商標の登録を希望する商品区分(例:アイス、ラーメン、パンなど)の数。
「一出願多区分制」といって、1つの商標登録出願につき複数区分の商品・サービスを指定することができます。
※その他、弁理士を起用する場合は弁理士費用が別途必要になります。
※分納など、上記料金とは異なる制度があります。詳しくは特許庁のホームページをご確認ください。

◆海外での商標登録

外国で商標権を取得するには、出願したい国に直接出願する方法と、国際的に統一された制度を利用する方法があります。
国際的に統一された制度は、日本も加盟している「マドリッド協定議定書」に基づくもので、これを利用すれば統一された様式で1つの言語(英語またはフランス語)で出願することができます。
また条約に加盟している国を複数指定することにより、一定の条件の下で、それらの指定した国においても一括して商標権を取得できます。

⇒マドリッド協定議定書の概要(特許庁)

 

■特許権

◆特許とは

特許は「発明」を保護するものですが、インダスリアルデザインはある意味で物の創作物ですので、技術的観点から「発明」として捉えることができるものも少なくありません。
特許法では発明を技術的「思想」の創作と位置づけているので、デザインの技術的側面に関わる「アイデア」を特許法によって保護できる場合があるのです。
たとえば、取っ手付のコーヒーカップがなく熱い物が飲みにくかった時代に、カップに取っ手を付けることを考えたとします。この場合、「カップに取っ手を付ける」という技術的なアイデアが特許法で保護されます。

特許法では、「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定めています。商品に係るものはもちろん、方法(たとえば製法)に対しても認められます。

◆特許登録の条件

特許権は特許庁における審査を経て、審査をパスした発明について発生します。
まず下記の条件を満たすことが必要です。

①自然法則を利用

・・・次のようなものは発明に該当しません。

  • 「計算方法」のような人間の知的活動によって案出された法則
  • 「ゲームのルール」などのように自然法則とは無関係の人為的な取り決め
  • 「催眠術を利用した広告方法」のような心理法則
  • 「万有引力の法則」のように自然法則それ自体であって自然法則を ”利用” していないもの
    など。

②技術的思想

・・・「技術」とは、実際に利用でき、知識として伝達できるものをいい、個人の熟練によって得られる技能とは異なります。したがって、「フォークボールの投球方法」のように個人の技能によるものや、「絵画・彫刻」などの美的創作物(これが工業デザインなら意匠登録の対象にはなります)は技術に該当せず、特許法上の発明にならないのです。

③創作

・・・「創作」とは、新しいことを創り出すことをいうので、「発見」とは区別されます。したがって、天然物の単なる発見は特許法上の発明になりません。たとえば「エックス線の発見」は発明ではないですが、「エックス線装置」ならば発明となります。

④高度

・・・発明は、自然法則を利用した技術的創作であっても、「高度」なものでなければならないとされています。とはいえ、遺伝子や電子計算機やエックス線装置のような極めて高度なものに限られません。前記のコーヒーカップの例のように、従来にない新しい機能を発揮するならば、立派な発明となり得ます。

ただし、次のような発明は特許を受けることができません。

  1. 産業として実施できないもの
    ・・・たとえば「オゾン層減少による紫外線増加を防止するため地球全体を紫外線吸収フィルムで覆う方法」(実際上、実施できないから)、「猫舌向けのお茶の飲み方」(個人的にのみ利用され市販の可能性がないから)などは特許を受けることができない。
  2. 新規性のないもの
    ・・・特許出願前に公然と知られた発明や特許出願前に書籍やインターネット等に掲載された発明は、新規性がないとみなされる。
  3. 進歩性のないもの
    ・・・その発明やそれが適用される分野に関する技術について通常の知識を有するものであれば用意に発明できたであろうものは、進歩性がないとみなされる。たとえば「机の移動をスムーズにするキャスター」は進歩性がないとみなされる。
  4. 先に出願されているもの
    ・・・同じ内容の発明であれば、日本では先に発明を完成した者ではなく、先に特許庁に出願した者に特許権を与える(先願主義)。アメリカはその逆で、先に発明を完成した者が特許を受けるが、発明を完成した時期を客観的に判断するのは困難なので、現在アメリカ以外でこの制度を採用している国はない。
  5. 公序良俗に反するもの
    ・・・紙幣偽造装置や麻薬密輸バッグなどは、いかに技術が優れていても特許を受けることができない。

◆特許の保護

特許は独占排他的な権利です。特許を取れば、誰か他の者が無断で君の発明を使ったり、君のアイデアを利用して物を作ったりすることをやめさせることができるのです。
第三者があなたに無断で特許発明を実施した場合、それは特許権侵害となり、侵害行為の差止め、損害賠償、信用回復の措置などなどを対象に請求することができるし、侵害した者は刑事罰の対象ともなります。

また特許権者は、その特許を自分で利用する他にも、第三者にその特許を利用する権利を許諾(ライセンス)することもできるし、売却・譲渡により特許権自体を第三者に与えることもできる。このように、特許権は有効に活用できるのです。

特許権は、出願の日から20年間保護されます。

◆特許出願の手数料および登録料

特許出願された発明は、出願後1年6ヶ月後に特許公開公報として公開されます。
特許出願を考えている方は、まず特許情報にアクセスして同じ分野における他人の先行特許を調べる必要があります。
このような特許情報を得るには公報類や都道府県の知的所有権センターなどがありますが、たとえばインターネットで特許庁HP(http://www.jpo.go.jp/indexj.htm)にアクセスすれば、特許電子図書館などの各種情報が得られます。
先行特許の調査をすれば、自分の発明がどの程度の価値があるものか、おおむね想像がつくでしょう。

・出願時費用(特許出願手数料) ・・・15,000円
・登録時費用(特許料/初年度〜3年目まで) ・・・毎年2,300円に1請求項につき200円を加えた額
・その他の費用(出願審査請求手数料) ・・・118,000円+(請求項の数×4,000円)

※請求項とは、「特許にしてください」と請求している項目のことです。保護を受けたい発明の内容を記載します。一つの発明出願について複数の請求項を記載することができるので、関連する発明の保護も併せて受けることができるのです。
※その他、弁理士を起用する場合は弁理士費用が別途必要です。
※個人や中小企業への特許料減免制度など、上記料金とは異なる制度があります。詳しくは特許庁のホームページをご確認ください。

◆海外での特許登録

外国で特許権を取得するには、外国の特許庁へ直接出願する方法と、国際的に統一された制度を利用する方法があります。
より簡便かつ経済的に出願するために、国際的に統一された制度、すなわち日本も加盟している「パリ条約」または「特許協力条約(PCT)」のいずれかの制度を利用するのが一般的です。

■実用新案権

日本には、特許法のほかにも実用新案法という法律があります。
日用品や玩具などの分野では、ちょっとした工夫を加えただけでヒット商品になるようなものもあるでしょう。
特許はどちらかというと技術的に高度な発明を保護の対象としているのに対し、実用新案はそうした発明ほどは高度ではない ”ミニ発明” すなわち「考案」を保護するために設けられている制度です。

実用新案法では、「考案」を「自然法則を利用した技術的思想の創作をいう」と定めています。そのため、特許法が保護する「発明」も、実用新案法が保護する「考案」も、「技術的思想の創作」である点で共通しています。
異なる点は、発明は考案よりも高度なものであることが要求されている点と、特許法では方法の発明も保護されますが実用新案法では「物品」に係る考案のみが保護されるという点です。

ライフサイクルの短い製品に対して早期に権利保護を求めるニーズが高まっているため、実用新案の場合は、提出書面など一定の必要条件を満たせば、保護に値するか否かの審査を受けることなく登録され、権利が発生します。このように無審査なので、迅速に権利が発生する点に実用新案の魅力があるわけですが、その反面、審査を経ていないので、本来保護価値のないものも登録されることにもなります。そこで、登録はするけれども、実際に権利を行使しようとする場合には、客観性のある技術評価を受けなければならないことになっています。

実用新案権は、出願の日から6年間保護されます。

◆商標出願の手数料および登録料

(手数料および登録料 <請求項が1つの場合>)
・実用新案出願手数料 ・・・14,000円
・登録料(初年度〜3年目まで) ・・・毎年 2,100円に1請求項につき100円を加えた額
————————————————-
・実用新案技術評価の請求手数料 ・・・49,500円+(請求項の数×5,500円)

※その他、弁理士を起用する場合は弁理士費用が別途必要です。
※詳しくは特許庁のホームページをご確認ください。

これまで見てきたように、意匠、商標、特許など知的財産権を取得するには比較的時間も費用も掛かります。
しかし、あなたの知財を他人に勝手に使用させないことによってあなたが得られるお金が、知財取得・維持コストを上回ると判断できるならば、知的財産権の取得は大きな価値があるのです。


 

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!

商標や特許、実用新案は大企業が取得するものと考えている方も少なくありません。しかしながら、特許の取得がきっかけで成功を収めたり、自分の権利を守ったりすることができたりしたケースは枚挙にいとまがありません。ベンチャー企業や個人の特許料の減免制度が存在する事に見られるように、日本政府としても小規模事業者が特許や実用新案を取得することを奨励しています。

もし自分が創作したデザインや商標、発明が「斬新だ」と考えるのであれば、それらを公にする前に、特許庁へ出願申請を行なっておくことが賢明だといえるでしょう。

 

 

次回は、「9.自らのデザインを守る(3)」として、実際に知財を守るにはどうしたらよいか、ケーススタディを交えてお話しします。
記事に誤りなどがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。また、ご意見・ご感想などもお気軽にお寄せください。
「こんな内容の記事を書いて欲しい」「こんなことで悩んでいる」などのご要望やご相談もお気軽に!

この記事の著者

藤田 健プランニングディレクター

Skillotsを含むエフ・プラット株式会社の全てのサービスの企画・運営責任者。
神奈川県出身・中野区在住。

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