イラストの料金相場

イラストの料金

イラストの料金相場

当社への問い合わせで最も多いのがイラストやデザインの料金相場についてですが、イラストの制作料金は、案件毎に大きく異なるのが実情です。この記事では、様々な解釈による料金相場を紹介し、Skillots(スキロッツ)上での取引の実例を踏まえて「なぜ料金に幅が出るのか」という謎を解明した上で、イラストの制作料金のあるべき姿について考えていきます。

 

■各社・団体が発行する資料から読み取れるイラストの料金相場

 

1.Skillotsのプロフィールに見る料金相場

SKillotsでは、イラストレーターが公開するプロフィールA4のカラー原稿1枚のイラストに対する料金を設定できるしくみになっています。

2014年11月時点で料金を公表している3,500人のプロフィールの平均は、A4のカラー原稿1枚のイラスト:11,783円です。

 

2.日本イラストレーター協会(JIA)が公表している料金相場

日本イラストレーター協会さんの記事では、以下のような表現となっています。

パンフレットなどで10cm角に納まるくらいの小カットとして使用する場合、モノクロイラストで1点あたり3,000円5,000円カラーで5,000円10,000円というところが相場です。

3.公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が公表している制作料金算定基準

日本グラフィックデザイナー協会さんが公表しているJAGDA制作料金算定基準にイラストの制作料金が支出経費の例として掲載されているので紹介します。

全国紙 10段に使用するイラスト:80,000円
ポスター B1(1,000部印刷)に使用するイラスト:500,000円

4.広告制作料金基準表―アド・メニュー〈’13‐’14〉(株式会社宣伝会議・刊)に記載の基準料金

株式会社宣伝会議さんが毎年発行している広告制作料金基準表では、全国の広告会社や制作会社にアンケートを実施し、広告制作の料金基準を提示しています。
その中で、イラストの制作料金は以下のように記載されています。

 
A
B
C
最頻値
テーマ・カラー30,000円〜75,000円〜150,000円〜50,000円
テーマ・モノクロ30,000円〜60,000円〜100,000円〜30,000円
カット・カラー5,000円〜10,000円〜50,000円〜10,000円
カット・モノクロ5,000円〜10,000円〜30,000円〜5,000円

※抽出された料金のうち、例外的に高い料金と安い料金を除外し、A、B、Cの3グループに大別してあります。
※「テーマ」とは、広告やWEBサイトなどのメインとして使用される比較的大きなサイズのイラストです。
※上記料金は広告会社や制作会社の見積りですので、フリーランスのイラストレーターの見積り料金に30〜60%程度上乗せされていると推測されます。

■イラストの制作料金の”幅”

上記の資料でも各社・団体が発行する資料によって基準料金はまちまちですが、Skillotsのイラスト制作の実績で実際の取引の内容を見ると、やはり同じような作業量のイラストに見えても案件によって全く料金が異なる事が分かります。

以下の5つのイラストは、Skillotsで実際に制作依頼が行われ、納品されたものです。構図や背景が似通っており、ほぼ同等の描き込みのイラストですが、制作依頼料金は全く異なります。

それぞれの制作料金を想像してみましょう!

 

An Illustration for Desk Mat

A

個人観賞用イラスト

B

Web小説タイトルイラスト依頼

C

D

風俗店のホームページで使用する女性イメージキャラクター

E

 

正解は・・・

・・・

・・

 

 

以下のように、依頼料金にかなりの幅があります。(以下料金はSkillotsの手数料と消費税を含んでいます。)

A:86,000円
B:50,000円
C:19,440円
D:7,000円
E:5,500円

なぜ、このような差が発生するのでしょうか。それは、イラストの料金を決定する要素の違いにあると考えられます。

 

■イラストの料金を決定する要素

ところで、サービスや商品の価格は、一般的にはどのように決定されるのでしょうか。
価格決定の方法として、一般的に以下の3つがあると言われています。

1.コスト(原価)志向型価格決定法

商品やサービスの提供にかかる費用に利益を乗せて価格を決定したり、中長期的に損益がプラスになるような価格を設定する方法。
イラストの場合は、以下の計算式で価格を設定します。
(1時間あたり人件費+1時間あたり事業の固定費)×作業時間+必要経費+利益=制作料金
参考資料:クリエイターのためのビジネススタートアップガイド 7.商品・サービスの採算

 

2.需要志向型価格決定法

商品やサービスを購入する顧客が買いやすい価格に合わせて設定する方法。
イラストの場合は、「クライアントの予算に合わせる」ということになります。
需要志向型価格決定法では、レジャー施設等の学割やレディース料金に代表されるように、顧客層に合わせて同じサービスでも異なる料金を設定することがあります。イラストでも、法人顧客からの注文と個人顧客からの注文では料金が違うということがよくあります。知り合いから「お友達価格」で受注する場合もありますね。
また、需要志向型価格決定法では、あえて高めの料金設定にして安心感を与えるという手法もとられます。顧客はあまり安い料金を提示されると品質に不安を持つ場合があるためです。

 

3.競争志向型価格決定法

同業他社が販売している価格や、市場価格に合わせて価格設定をする方法。
イラストの場合は、業界慣習に合わせた料金設定をしたり、他のイラストレーターと同程度の料金設定をするということになります。

Skillotsの料金決定までの経緯を観察すると、フリーランスのイラストレーターによるイラストの制作料金は、以下のような要素を加味して決定されているのが分かります。下記の要素中で、上から順に料金の設定に対する影響度が強い傾向があるようです。

  1. 発注者(クライアント)の予算
  2. 業界慣習
  3. イラストレーターの人気度
  4. イラストレーターのキャリア
  5. イラストレーターの生活コスト・事業コスト
  6. イラストの複雑さ=作業時間
  7. イラストのサイズ
  8. 使用媒体
  9. 使用期間
  10. 著作権料(参考記事:デザイン・イラストの著作権

多くの案件ではクライアントの予算が最も料金決定に影響し、イラストレーターの作業時間は料金設定にあまり影響を与えていないように見えます。
形態的には需要志向型の価格決定がされていると言えますが、本来価格設定には必ず考慮されるべきコストが反映されていない(ように見える)案件が散見される事は気になります。相当な作業時間の短縮や生活コストの低減がない限り、先ほど比較した案件のC、D、Eではイラストレーターが利益を出すのは難しいかもしれません。

また、著作権料が料金に反映されるケースが少ないのも注目に値します。前述の案件のAとDはイラストレーターが著作権を保持していますが、B、C、Eは著作権が発注者に譲渡されています。これらの案件に該当するかは不明ですが、将来的な資産となり得るイラストの著作権を譲渡する際に、著作権譲渡料金が加味されない契約は明らかにイラストレーターにとって不利なものです。

このような価格決定方法になる理由として、取引プロセスの性質関与するプレイヤーの変化が挙げられると考えられます。

【取引プロセスの性質による影響】
フリーランスのイラストレーターは、自ら営業活動をする方はあまり多くありません。ほとんどの案件は、広告代理店や知り合いの紹介、自身のウェブサイトからの問い合わせ、SNS、Skillotsのような登録サービスを通じて受注します。
このような経緯を辿ると、クライアントが予算を提示するケースが多く、これに合わせた見積りにしなければいけないような心理的圧力が働く結果として、コストを鑑みない料金でのサービス提供に至る場合が見受けられます。

【関与するプレイヤーの変化による影響】
従来イラストは特殊技能として、主に出版社や広告代理店を通じて発注が行われており、イラストレーターのコストを考慮した契約が行われていました。近年、インターネット/スマートフォンの普及や、描画ソフトの普及、幅広い世代でのアニメ・ゲームの受容などを背景としてイラストの活用方法が多様化し、発注者側・受注者側共に数多くの新しいプレイヤーの参入が起こりました。その結果、新しいイラストのマーケットでは取引慣習の継承が行われず、料金相場や著作権契約に関して新たな市場原理が働いているようです。また、同時期のデフレの影響によるクライアントの経費削減傾向も見逃せません。

 

■イラストの制作料金のあるべき姿

イラスト制作において、一部の取引で適正でない料金設定がなされると、やがて市場全体に波及し、イラストレーターの市場参入や成長を阻害する結果、広告やゲームなどの品質低下につながり、ひいては消費者や文化にまで悪影響が生じる可能性があります。それでは、「あるべき制作料金=正常価格」とはどのようなものでしょうか。

分野は全く異なりますが、イラストと同じように様々な複合要素によって価格が変動する例として、不動産があります。
平成21年に国土交通省が発行した不動産鑑定評価基準では、不動産鑑定士による不動産の鑑定評価の基準として、「正常価格」の概念を以下のように定義しており、イラストの適正な制作料金の輪郭を捉えるヒントになります。

正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。

つまり、マーケット、経済全体から見た価値を考慮した価格が正常であると指針を示しています。
また、この中で市場参加者の行動指針を以下のように示しています。

  • 対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。
  • 対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。
  • 買主が通常の資金調達能力を有していること。
    (一部抜粋)

これらをイラストの制作料金に置き換え、前述の問題を併せて考えると、「あるべき制作料金」で取引がなされるためには、以下のような要素が必要になるのではないでしょうか。

イラストが正常な料金で取引されるために必要な要素

  • 政府や業界団体、シンクタンク、関連企業等が業界の発展や文化の醸成を踏まえ、現実の社会情勢下で適正なイラストの取引金額について指針を示すこと。
  • 受注者および発注者が納品されるイラストおよびイラストの市場について取引を成立させるために必要な知識や情報を持つこと。
  • 受注者が納品するイラストを制作するのに必要なコストを正しく算出し、発注者に根拠を持って提示すること。
  • 発注者が納品されるイラストを最大限有効に活用することを前提とした価値判断を行うこと。
  • 発注者が通常の予算を確保すること。

 


いかがでしたでしょうか。

この記事を読んだ方が、イラストの適正な依頼料金についてお考えいただくきっかけになれば幸いです。

様々な立場や事情によって、この記事の内容が適切でない場合もあるかもしれません。ぜひ皆さんの感想やご意見をいただき、より議論を深められたらと思います。
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この記事の著者

藤田 健プランニングディレクター

Skillotsを含むエフ・プラット株式会社の全てのサービスの企画・運営責任者。
神奈川県出身・中野区在住。

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