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自己紹介

閲覧ありがとうございます。
趣味の創作活動の一環として、10年以上短編小説や詩歌を中心に文章を書き続けております。
ライティングのお仕事は経験はまだありませんが、これから実績を重ねていきたいと考えております。
出来る限り、ご要望や指示にお応え致します。まずはお気軽にご相談下さい。
どうぞよろしくお願い致します。

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  • 活動年月:3年
  • 活動拠点:福岡県
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登録作品

夏の背中

「なんて空だ」
 ブタクサを背にして、夏が旅立とうとしていた。四天王である自身の壮大さを見せつけるかのように、一季におけるありとあらゆる全ての力を総動員して、夏は真白で巨大な入道雲を作っていた。西の空のほとんどを覆う巨体の裾は、地平へ沈みゆく陽に燃えて赤く光っている。それはさながら明晰夢の中にいるかのような、奇妙なシュールレアリズムであった。現実を超越した夕景がそこにはあった。僕は自転車を走らせながら、何度も何度も右へ視線を遣った。
「なんて空だ、なんて空だ」
 生温い空気の中、僅かに冷たさを含んだ風が汗ばんだ額を掠めた。それは涼やかな虫の音を運び、はるか上空で高く昇り立つ積乱雲をかき消そうとしている。西の空の向こうへゆっくりとその体を移しながら夏は言った。
「さらば、一年後」
 低く重たい声が空気全体を響かせて静かに消えゆく中、僕は悠然とした大きな後ろ姿を言葉にならない思いで見つめ続けた。東の空からは青い闇が流れ出し、天上では半月が静かな光を湛えている。秋の風が夏の背中を後押しして、今や巨大な輪郭は霞みつつあった。
 西の向こうはどこへ繋がるのだろう。僕らの前から消えた後、夏は眠ることなく弧を画えがくのだろうか。夏を送り出すように、僕は疲れて強張った足でペダルを強く踏んだ。

無題

 窓からぬるい風が応接室のカーテンをはたはたと揺らしている。朝練習が終わった運動部員たちの喧噪が遠くで響いているのを、秦仁朗は静かに耳を澄ませていた。高校へ入学して一ヵ月が経つ五月の中頃となれば、新しいクラスにも慣れて気の合う友人やグループができているに違いない。日本に来て今回で四回目となる転校は、彼にとって今さら驚くべき出来事ではないが喜ばしくないことは明らかだった。
「織部先生、今日から秦仁朗のことをどうぞ宜しくお願い致します」
 亜麻色の髪を垂れて深々とお辞儀をする母親の言葉に、秦仁朗の担任となる織部は少し戸惑った様子で微笑んだ。
「いえ、こちらこそ宜しくお願い致します。……日本語がお上手なんですね。」
 母の翡翠色の瞳を見つめた後、ちらりと秦仁朗を見やる。
「二井は、日本語は大丈夫なのかな」
 秦仁朗は黙ってカーテンの向こう側を見つめ続けている。その様子に母親が慌てて口を開けた。
「もちろんです。日本に来てもう五年が経ちますし、私の父も、それから彼の父親も日本人ですから」
「ああ、そうだったんですか。これは失礼しました。……とすると二井はクオーターか」
 再び落とされる担任の質問に反応しない秦仁朗の腕を母親が小突き、すみません、人見知りなもので、と織部へ苦笑した。
 日本人の父親と英国人のハーフである母親との間に生まれた秦仁朗は、透き通る白い肌と薄いソバカス、灰茶色の髪色、翡翠色と中央が琥珀色が掛かった瞳をしている。誰もが一目見て「ガイジン」だと思う見た目のせいで、行く先々の学校で興味本位にからかわれてきた彼には、親の都合で繰り返される「好奇の新生活」は日常茶飯事であり取り立てて傷付くことでもなかった。日本に来た当初こそは、子供が持つ無垢と言う名の残酷さで幾度となく辛い思いをした。しかし成長するにつれてあからさまな好奇や侮蔑の目は少なくなったものの、最近はある種の憧憬とも形容すべきか、思春期特有の春めいた反応も増え始めていたため、秦仁朗はこれまでの転校同様に、これから始まる面倒臭い儀式を前に辟易していた。
教科書や制服の手配に関する彼らの事務的な会話を横目に、秦仁朗は詰まらなそうに窓の外を眺めた。部活動の後片付けをする生徒らがこちらに気付き、指を差しながら何か話している。きっと俺の見てくれを面白がっているのだろう。ここでも見せ物になってすぐに飽きられるに違いない。秦仁朗はそう思案して軽くため息を吐いた。
 新しい学校へ行く度に待ち受けるお馴染みの反応に彼はいつしか心を閉ざし、誰に対しても冷めた対応を取るようになった。「ガイジン」として冷やかしの目で見られることよりも、彼の思考、好み、話し方、選択の全てが彼自身の内なるアイデンティティとしてではなく、彼の容姿というフィルターを通して歪まされて受け取られることに傷付き、虚しさを感じていた。
「さて、ではそろそろ教室へ行こうか。二井」
 今後の話を粗方終えた織部が腕時計に目を遣った。ホームルームが始まるからね、と目尻に皺を作って笑う。
「シン、しっかり頑張りなさいよ」
 不安げに息子の肩を抱く母に、秦仁朗は澄ました声で答えた。
「分かってるよ」
 母は無粋な表情をした息子の髪にキスをして、去り際に軽く振り返って"I love you."と呟いた。秦仁朗が面倒そうに"Bye."と声を掛ける様子を見て、織部が口を開く。
「二井とご家族は日常的に英語も使うのかい」
「……。そうでもないです」
「そうか。国外での生活が長かったようだし、英語の授業で君に助けてもらうかもしれないな。」
 まるで今日から明るい生活が始まらんとでも言いたそうに冗談を言って笑う織部を尻目に、秦仁朗は何も答えず眉を寄せて、前を歩き始める担任の背中を追った。

制作実績

掲載可能な受注実績はありません。


得意分野

記事・コラム,ブログ,スピーチライティング,書籍・出版コンテンツ,エッセー,作詞,脚本,テープ起こし

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